栽培方法
ここで紹介します『パフィオペディルムの栽培方法は、私の経験などから栽培のコツや注意点とかを簡単にご紹介します。なお、栽培方法の詳細は、育てる場所などの環境により左右されますので、標準的な栽培方法は各文献が販売され詳しく掲載されていますので、そちらを参考に栽培にチャレンジ下さい。
                            
花壇ではチューリップが咲いています
パフィオペディルムは、台湾からニューギニア・東南アジア・インドまでの広範に自生しています。一部の種を除いて、比較的低温で育てられるランです。低温種は温室が無くても育てる事が出来ます。昔の多くの趣味家は加温無しの半地下式のフレーム温室で湿度を保ちながら育てていました。以前は分類上シュプリペディウムとして呼ばれていましたが、現在の植物分類上はシュプリペディウム属(日本のクマガイ草等)と別にパフィオペディルム属として分類されており、6つの亜属を要しています。花の形は独特で、渋い古典的な形をしています。趣味の魚釣りに例えると川釣りから始まって海釣りへ、そして究極は川(渓流釣り)に終わるのと同じで、私のように不思議な魅力の虜になり、のめり込む人も少なくはないと言われています。花形は独特のリップの形をしており、名前の由来もラテン語で「女神のスリッパ」、英名も「レディスリッパー」と呼称されています。原産地は東南アジアを中心とするアジア地域に広く分布しています。海岸近くの崖から薄い霜が降るような高山に自生し、殆どの種が薄日のあたる樹木の下の腐葉土に地生しています。一部は花崗岩や石灰岩等の岩の割れ目や崩れた石の中に根を伸ばし生育しています。近年は、石やバークなどをミックスしたコンポスト植えて栽培する方法が普及して成功しています。カトレア等と違って水分や栄養分を蓄える事が出来ないので、鉢内が乾く前に水遣り行うこととなりますが、慣れれば比較的育てやすいランです。
バービセパルム亜属
armeniacum
delenatii
emesoniir
maripoense
micranthum
hangianum
中国南部からベトナム南部にかけて分布し、この属は極めて原始的なシプリペディウムに近いとされています。デレナティはベトナム南部に生息し、比較的高温(15℃〜30℃)で湿度が高い環境に生育しています。アルメニアカム・ミクランサムなどは温度変化が大きい環境(4℃〜30℃)の中国雲南省の山岳に自生しています。
ブラキペタルム亜属
bellatulum
concolor
godefroyae
niveum
wenshanense
x ang−thong
マレー半島から中国南部にかけて分布し、バービセパルム亜属と並んでパフィオの中では栽培家に根強い人気がある属です。ニビウムなどは石灰岩質の岩場に生息し、中には直射日光が当たるような所にも生息(7℃〜35℃)しており、花茎が短く、株に比較して大きな卵型のリップと蝋質の整形花を咲かせます。
ポリアンサ亜属
kolopakingii
philippinense
rothschildianum
sanderianum
stonei
parishii
パフィオの王様ロスチャイルディアナム、幻のランサンデリアナム等を始めとする多花性のパフィオです。ラン展ではカトレア等の豪華なランと反して、脇役にされがちなパフィオですがポリアンサ属は負けない程の迫力を持っています。株は大型が多く、自生地はボルネオ・フィリッピン・ニューギニアに分布し、高温・多湿な環境(20℃〜30℃)で育っています。
パフィオペディルム亜属
fairrieanum
chariesworthii
henryanum
tigrinum
druryi
hirsutissimum
パフィオの中のパフィオと言われるくらい花形が地味なグループに属します。インド南部、中国南部・マレー半島の温度変化が大きい環境(5℃〜32℃)の広大な地域に生息し、腐葉土あるいは石灰岩質の岩場等へ自生します。花形は地味ですが交配された整形花の交配親の基本となる属でもあります。
シグマトペタルム亜属
argus
barbathum
callosum
lawrenceanum
sukhakulii
wardii
この属の特徴は花に筋が入ります。別名でモーディエタイプとも言われています。香港・中国南部からネパール・ジャワまで広い地域に分布しています。比較的小型な事から営利目的で多く生産されています。見た目の派手さ等はありませんが、変化に富む花形と花はなくても、東洋蘭に見られる斑入り葉の鑑賞が出来ることから一鉢は持ちたいパフィオです。
クロコペタルム亜属
primulinum
glaucophyllum
liemianum
chamberlainianum
victoria−mariae
kalinae
比較的大きな葉を持ちながら花は、こじんまりとしています。多花性で次々に咲くことから長いもので6ヶ月以上も咲きつづけ鑑賞することができます。花形はハチや虫が飛んでいるようにも見えます。インドネシアのスマトラ島とジャワ島の限られた地域に生息します。比較的温暖な環境(8℃〜30℃)で石灰岩や花崗岩質の中で育っています。

鉢・植え込み材料 ミックスコンポストは、パフィオにはオールマイティな植え込み材料と言えます。ミズゴケに適しているものでも石材の比率を下げてバークの比率を上げる等により、水分の保留率を上げる事が可能です。同時に他のコンポストより水はけが良いので通気性も良く、水を多く要求する品種や少ない品種も水遣りの回数で簡単に操作が可能です。初心者にも安全なコンポストと言えます。亜属の説明でも書いていますように、中には花崗岩や石灰岩質の中に根を張り巡らしている品種もありますので、このコンポスト(石灰質のものを加える)でないと生育が好ましくない品種もあります。
ミックスコンポストの組合せに用いる成分は、@水分保持力の低い(水をはじく)成分、A水分保持力の強い(水を吸収する)成分、B腐敗物などの環境を悪化させる物質を吸収する成分を基本にしミックスします。@には石材(日向ボラ土、セラトン、焼赤玉土等)を使用します。Aにはバークやベラボン(ヤシ殻チップ)、パーライトなどがあります。Bにはチャコール(活性炭)、炭、ゼオライト、セラミックスの原石、オーキッド・ベース等があります。各植え込み材には色々なサイズに分けて市販されていますので、成株には大から中サイズ、中株には中から小サイズ、苗には小サイズなどと株の大きさで使い分けます。また、水やりの頻度が多い人は、Aの成分を少なめにし、@とBの成分の比率を多くしたり、大きめのサイズにしたりします。小さめの成分を使用するときは予想以上に水が停滞し、乾きにくいので注意が必要です。フラスコ出し直後の株や小苗等の株に最適です。株の消毒や植え替え後の管理は、ミズゴケ等に準じますが、植え替え直後は、水をタップリやって小さなクズを鉢底から流して下さい。
ミックスコンポストで植え替えたものは、時間が経過するにしたがってバーク等は腐って粉々になり鉢底から出ます。しかし、基本的に石材は腐りませんので、鉢の中の株が窮屈にならない限り次の植え替えは大丈夫ですが、肥料成分等が石に吸収されたり根鉢が出来るほど根が鉢内に張ってきますので、株の状態を見ながら植え替えます。ミックスコンポストの場合は、ミズゴケ等と違って、根に巻きつきませんので植え替えは簡単ですし、根を傷める確立が小さいといえます。
遮光と温度 原種の場合は各品種の生育している環境を参考します。交配種の場合は、交配に用いられた原種を参考にします。低温種と高温種との交配の場合は、株がどちらの親の性格を強く継承しているかによって判断します。
様々な遮光材が市販されていますが、市松模様の遮光材は比較的風を通すのと、採光が均一でお奨めです。なお、遮光材は温室の外の屋根上に温室から30センチ以上は離して張ります。2重に張る場合は、二枚の遮光材は最低10センチ離して張ります。
●亜属別の遮光率
 
パービセパルム 50〜60% 30〜50%
ブラキペタルム
ポリアンサ 40〜50% 20〜50%
パフィオペディルム 50〜60% 40〜50%
シグマトペタルム 50〜70%
コクロペタルム
●種類別の最低最高温度(適温)
  最低 最高
ベラチュラム、リューコキラム、コンカラー、ロスチャイルディアナム、フィリピネンセ、サンデリアナム等 20℃ 30℃
ストネイ、アダクタム、アクモドンタム、コクロペタラム等 18℃
整形交配品種を含むその他のほとんどの品種 15℃
フェイリアナム、ベナスタム、ワーディー、ヒルスティシマム等 10〜12℃
ミクランサム、アルメニアカム、マリポエンセ等 7〜10℃
潅水 パフィオは比較的に水を好みます。鉢内は決して乾かさないようにするが原則です。かといって、常に水が鉢内に滞留し空気の層が無いといった状態になると、根が腐れて最後は株も駄目になります。コンポストとコンポストの間に空間あって、空間の湿度により根が湿気を帯びている状態が生育にとってベストと言えます。
鉢の大きさ、コンポストの種類・粒の大きさ、鉢を置く場所(冬は暖房機の近くや上部に行くほど乾燥、日当たりや風通し)の違い、また、株の状態(生育が良いものは水を早く吸収するし、弱っている株は水をあまり吸収しない)でも違ってきます。
潅水は、季節の変化毎に水やりの周期を変更するのがベストでしょう。周期のおおまかな目安は、夏は2〜3日(暑い時は毎日)に一度、冬は一週間に一度くらいの頻度でしょうか。根に支障があるような株には、水を控えめにして発根を促すことも必要です。
水は、基本的にホースで株の上からタップリで良いです。冬は、水道水が冷たくなるので、温室内に貯め置きした水(20℃くらい)を与えます。軟腐病は、潅水の性ではなく、日頃の病害虫予防がされていない事や十分な通風がない事による原因です。ダニやカイガラムシ等が株に傷を付け、そこに水がかかり、病原体を水といっしょに傷口から浸透させてしまうから軟腐病等にかかってしまったと言う事になります。病害虫に対する予防が日頃から出来ていると、水やりも楽です。自然の状態では、雨は株の上から降っています。自然界は病害虫の天国です。病気にかかり駄目になる株もありますが、元気な株もあります。元気なものは害虫等の被害にあっていないためです。しかし、出来るだけ薬剤散布は避けて自然の状態にしたいという方や花が付いた鉢は、株の上から水やりせず一鉢毎に鉢に直接水をやることになります。
また、水やりをこまめにやる性格の人は、乾燥しやすい水はけの良いコンポストを使用し、逆に仕事が忙しくて、こまめにやれない人はミズゴケなどのコンポストやミックスコンポストならバーク等の比率を多くすると言った工夫により調整する方法もあります。
肥料 肥料は株が生育していない時は控えめにして、生育している時は与えるというのが原則です。
環境にもよりますが、パフィオの場合は、機嫌が良いと一年中成長していますので、一週間に一度は薄い液肥を潅水と同時に与えます。
しかし、夜間温度を15度以下に保てない時は液肥も止めます。肥料には、固形(グリーンサムポット)と液体肥料を使用しています。固形肥料のグリーンサムポットは根にもやさしい成分を含んでおり、3〜4ヶ月に一度を目安に取替えます。
液肥には、窒素、リン、カリの三要素の他にマグネシウムなどの微量金属が含まれているものを使用します。葉の生育期には窒素窒素の比率が高いものを用います。花の開花に向かう秋にはリンの比率が大きいものを与えます。
指示された規定希釈のさらに2〜3倍に希釈したものを、週1〜2回与えるのが安全です。濃い肥料を時々与えるより、薄い肥料を頻繁に与える方が効果的です。規定希釈の5〜10倍くらいに希釈したものを、水やり毎に与えてもよいでしょう。しかし、安心といっても与えすぎは禁物です。
(病害虫の消毒については市販されている栽培専門書に詳しく解説してありますので、希釈濃度・期間・時期・組み合わせ等を間違えないように実施してください。)
病気と薬剤 風通しを良くして適度な日光に当てれば耐病性も強くなります。最近は植物への無農薬栽培が流行っていますが、、どんなに栽培が上手でも病気は必ず出てきますので、予防を兼ねての消毒をお勧めします。アブラムシやダニが着くとウイルスを媒介し、大切な株を消却しなければならない羽目になります。又、ウイルス病予防の意味から使用する器具はビストロン(第三燐酸ソーダーの希釈液)で消毒するか、バーナーで焼いたものを冷ましてから使用します。植え替えの時に使用する鉢は、新しいものを使用し古いものは捨てましょう。

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